追憶、ちひさな文藝キャバレー《霧とリボン》
去る六月の清々しい初夏の一日、ご婦人限定のお茶席「ちひさな文藝キャバレー《霧とリボン》」を開催致しました。

お客様を待つやさしい光……(PHOTO:Fumie Katsuki)

(PHOTO:Fumie Katsuki)

バルテュスのリトグラフ“Dessins”(1994年・64/150)(PHOTO:KIRI to RIBBON)
vol.3の今回は「バルテュスの少女たち、音楽の少女たち」と題し、音楽ライターの高野麻衣さまを女主人としてお迎えした美術と音楽のサロン。装い美しいご婦人方がひそやかに扉を過ぐる倦怠の午後、そして宵…… 忘れられないひとときとなりました。

霧とリボン・チャイナドレス・コレクション、
英リバティ生地で仕立てた20風のクラシックな一枚を
この上なく美しく着こなす我らが女主人
画家とモデルの部にて(PHOTO:Fumie Katsuki)

女主人の美しいお手元
霧とリボン《ガントレット・ブローチ》(左)と
《アリスの指輪〜ミドル・フィンガー・ブローチ》(右)を身につけて……
(PHOTO:Fumie Katsuki)

いったいいつの頃からでしょう……英国の小説や映画に登場する「ジェントルマンズ・クラブ」に憧れるようになったのは。吉田健一氏はご著作『英国に就て』の中でこう記しています。
「つまりクラブというのは、男しか出入りしない場所であるのが普通なので、それが英国のクラブの空気をどれだけ新鮮に、或いは落ち着いたものに、或いはまた、不思議に温かなものにしているかは、そう簡単には説明できない。」「男だけの世界がどんなに清潔なものか、英国のクラブに行ってみなければ解らない」
……解りたい! と願いました。
小説や映画で空想するだけでは物足りないわと「婦人俱楽部《霧とリボン》(2008年)」を結成(実はあまり盛り上がりませんでした…)。その後開催したのが「ちひさな文藝キャバレー《霧とリボン》(2009年)」です。殊に、英グラナダTV版《シャーロック・ホームズ》に登場する「ディオゲネス・クラブ」が大好きだったので、ご婦人版ディオゲネス・クラブを気取って。

目指すはホームズの世界

ヴァージニア・ウルフ『ボンド街のダロウェイ夫人』をテーマとしたお茶席
「ちひさな文藝キャバレー《霧とリボン》vol.2〜手袋とミントの葉」
(2009年6月 at Vanilla Mania)
人形作家・森馨さんが女主人をつとめて下さいました
そうして月日は流れ、英国から最大級の贈り物、そう我らが《シャーロック(BBC制作ドラマ)》が届いたのです! こちらでも「ディオゲネス・クラブ」が愛すべき場所として美しく、そしてウィットたっぷりに描かれており、文藝キャバレー再開への気分が高揚してきました。おりしも『花園Magazine』のガーリエンヌ様に当ブランドを取材頂いたことがきっかけで、等しくシャーロック・ホームズを愛する音楽ライターの高野麻衣さまと知り合うことができ、「女主人発見!」とばかりにご婦人版ディオゲネス・クラブ再スタートの設計書がブルース・パーティントン並みに完成した次第です。

(PHOTO:Fumie Katsuki)
こうしてようやく、文藝キャバレーの一日を迎えることができました。
バルテュスの少女たちにちなんだメニュー
初夏のささやかなお食事の後、高野さまによる仏蘭西詩の朗読と蓄音機演奏を。やや翳りを帯びた美しい声で紡がれるピエール・ルイス(鈴木信太郎訳)「ビリチスの歌」とポール・ヴェルレーヌ(永井荷風訳)「ましろの月」、長い眠りから覚めたように歌われる仏蘭西歌曲(ドビュッシーとレイナルド・アーン)……倦怠の午後にふさわしい少女たちの競演でした。

(PHOTO:Fumie Katsuki)

メニューカード、刺繍糸で糸縢りしたプログラム(PHOTO: KIRI to RIBBON)
続いてクープラン《神秘的なバリケード》、ラモー《タンブラン〜村娘》、そして宝塚歌劇レビュー《花詩集》の蓄音機演奏。「少女」にちなんだ選曲、高野さまによる音楽史を起点とした興味深いお話にお客様の瞳もますます輝いて…

絹糸タッセルが揺れる英国20年代製の蓄音機(ヘンリー・シーモア社特注品)

ターンテーブルは染め抜き雲模様の絹張り、この悪趣味ギリギリ感が最高!
きっと、シノワズリー趣味の美青年貴族が持ち主だったに違いない…
と想像をかき立てられる逸品

お食事と談話を楽しむテーブルの華やぎ……(PHOTO:Fumie Katsuki)
*
菫色のシフォン越しに西日が射し込み、夕暮れの諧調美しき頃、読書するカティア部(夜の部)がはじまりました。

(PHOTO:Fumie Katsuki)

読書するカティアの部では
昭和モダンの清楚なチャイナドレスにアリスのO・SA・GE ブローチを纏って
(PHOTO:Fumie Katsuki)

(PHOTO:asumi.h)
こちらのお席のお客様にはBBCドラマ《シャーロック》で使われていたAli Miller社の茶器をお出ししました。

(PHOTO:Fumie Katsuki)

シャーロックとモリアーティのティタイム(画像はAli Millerのサイトより引用)
「英国の食器も、それをガラス箱に入れて眺めるものであるよりは使い込まれて人間の生活に溶け込み、殆どその存在を消す為のものであってそこにも英国の文化に特有の優しさが認められる。」……吉田健一『英国に就て』より

カトラリーは英国アンティークの純銀製
美青年貴族(希望)の花文字が刻印されています(PHOTO:KIRI to RIBBON)

クリスタル、銀器、蝋燭の灯り……(PHOTO:asumi.h)

バルテュスのリトグラフ“Dessins”(1994年・66/150)が飾られた一角
川島朗オブジェ作品《サチス荘の影(円環)・2012年》(上)
安蘭《恋慕・2008年》(下)と共に……(PHOTO:asumi.h)
巴里のキャバレー「シャ・ノワール」に掲げられた標語「行き交う人々よ、モダンであれ!」をもじり、「扉を過ぐるご婦人たちよ、モデンであることなかれ!」の標語もかかげた我らが文藝キャバレー、これからもウィットたっぷりに、折々に素敵なテーマで開催できればと思っています。
霧とリボンのブローチをお召しのお客様も多く、その美しきコーディネートにもうっとりのひとときでございました。お越し下さいましたご婦人の皆様、お手伝い下さったふみ様、そして華麗に女主人をつとめて下さった高野麻衣さまに心より御礼申し上げます。
ご婦人の皆様、またひそやかにお会いしましょう♪

「言葉を交す、そう、同じ沈黙に属していることを知るために。」
……ナタリー・バーネイ(小早川捷子訳)
Curtain…

改装前のアトリエギャラリー(PHOTO:Fumie Katsuki)
☆高野麻衣さま、画家とモデルの部に参加下さったセラフィム様と美雨さまが当日の様子を綴って下さいました♪
高野麻衣さま
→Salonette: LOG
セラフィム様
→小さな屋根裏部屋
美雨さま
→魔女の星屑散歩 タロット占い師 美雨のブログ

お客様を待つやさしい光……(PHOTO:Fumie Katsuki)

(PHOTO:Fumie Katsuki)

バルテュスのリトグラフ“Dessins”(1994年・64/150)(PHOTO:KIRI to RIBBON)
vol.3の今回は「バルテュスの少女たち、音楽の少女たち」と題し、音楽ライターの高野麻衣さまを女主人としてお迎えした美術と音楽のサロン。装い美しいご婦人方がひそやかに扉を過ぐる倦怠の午後、そして宵…… 忘れられないひとときとなりました。

霧とリボン・チャイナドレス・コレクション、
英リバティ生地で仕立てた20風のクラシックな一枚を
この上なく美しく着こなす我らが女主人
画家とモデルの部にて(PHOTO:Fumie Katsuki)

女主人の美しいお手元
霧とリボン《ガントレット・ブローチ》(左)と
《アリスの指輪〜ミドル・フィンガー・ブローチ》(右)を身につけて……
(PHOTO:Fumie Katsuki)

いったいいつの頃からでしょう……英国の小説や映画に登場する「ジェントルマンズ・クラブ」に憧れるようになったのは。吉田健一氏はご著作『英国に就て』の中でこう記しています。
「つまりクラブというのは、男しか出入りしない場所であるのが普通なので、それが英国のクラブの空気をどれだけ新鮮に、或いは落ち着いたものに、或いはまた、不思議に温かなものにしているかは、そう簡単には説明できない。」「男だけの世界がどんなに清潔なものか、英国のクラブに行ってみなければ解らない」
……解りたい! と願いました。
小説や映画で空想するだけでは物足りないわと「婦人俱楽部《霧とリボン》(2008年)」を結成(実はあまり盛り上がりませんでした…)。その後開催したのが「ちひさな文藝キャバレー《霧とリボン》(2009年)」です。殊に、英グラナダTV版《シャーロック・ホームズ》に登場する「ディオゲネス・クラブ」が大好きだったので、ご婦人版ディオゲネス・クラブを気取って。

目指すはホームズの世界

ヴァージニア・ウルフ『ボンド街のダロウェイ夫人』をテーマとしたお茶席
「ちひさな文藝キャバレー《霧とリボン》vol.2〜手袋とミントの葉」
(2009年6月 at Vanilla Mania)
人形作家・森馨さんが女主人をつとめて下さいました
そうして月日は流れ、英国から最大級の贈り物、そう我らが《シャーロック(BBC制作ドラマ)》が届いたのです! こちらでも「ディオゲネス・クラブ」が愛すべき場所として美しく、そしてウィットたっぷりに描かれており、文藝キャバレー再開への気分が高揚してきました。おりしも『花園Magazine』のガーリエンヌ様に当ブランドを取材頂いたことがきっかけで、等しくシャーロック・ホームズを愛する音楽ライターの高野麻衣さまと知り合うことができ、「女主人発見!」とばかりにご婦人版ディオゲネス・クラブ再スタートの設計書がブルース・パーティントン並みに完成した次第です。

(PHOTO:Fumie Katsuki)
こうしてようやく、文藝キャバレーの一日を迎えることができました。
……食前のドリンク…… ミントのドレスを纏ったSweet Maiden “Drink Me!” ラズベリーと薔薇のコーディアル炭酸水 フレッシュミント入り ![]() (PHOTO:Fumie Katsuki) |
バルテュスの少女たちにちなんだメニュー
初夏のささやかなお食事の後、高野さまによる仏蘭西詩の朗読と蓄音機演奏を。やや翳りを帯びた美しい声で紡がれるピエール・ルイス(鈴木信太郎訳)「ビリチスの歌」とポール・ヴェルレーヌ(永井荷風訳)「ましろの月」、長い眠りから覚めたように歌われる仏蘭西歌曲(ドビュッシーとレイナルド・アーン)……倦怠の午後にふさわしい少女たちの競演でした。

(PHOTO:Fumie Katsuki)

メニューカード、刺繍糸で糸縢りしたプログラム(PHOTO: KIRI to RIBBON)
続いてクープラン《神秘的なバリケード》、ラモー《タンブラン〜村娘》、そして宝塚歌劇レビュー《花詩集》の蓄音機演奏。「少女」にちなんだ選曲、高野さまによる音楽史を起点とした興味深いお話にお客様の瞳もますます輝いて…

絹糸タッセルが揺れる英国20年代製の蓄音機(ヘンリー・シーモア社特注品)

ターンテーブルは染め抜き雲模様の絹張り、この悪趣味ギリギリ感が最高!
きっと、シノワズリー趣味の美青年貴族が持ち主だったに違いない…
と想像をかき立てられる逸品
……冷たいグラスのデザート…… 梅雨の晴れ間のように清々しい キウイのゼリー * 清楚という花言葉持つハーブ水 ![]() ミント、ゼリー、初夏の色……(PHOTO:kaori nakamoto) |

お食事と談話を楽しむテーブルの華やぎ……(PHOTO:Fumie Katsuki)
*
菫色のシフォン越しに西日が射し込み、夕暮れの諧調美しき頃、読書するカティア部(夜の部)がはじまりました。

(PHOTO:Fumie Katsuki)

読書するカティアの部では
昭和モダンの清楚なチャイナドレスにアリスのO・SA・GE ブローチを纏って
(PHOTO:Fumie Katsuki)

(PHOTO:asumi.h)
こちらのお席のお客様にはBBCドラマ《シャーロック》で使われていたAli Miller社の茶器をお出ししました。

(PHOTO:Fumie Katsuki)

シャーロックとモリアーティのティタイム(画像はAli Millerのサイトより引用)
「英国の食器も、それをガラス箱に入れて眺めるものであるよりは使い込まれて人間の生活に溶け込み、殆どその存在を消す為のものであってそこにも英国の文化に特有の優しさが認められる。」……吉田健一『英国に就て』より

カトラリーは英国アンティークの純銀製
美青年貴族(希望)の花文字が刻印されています(PHOTO:KIRI to RIBBON)

クリスタル、銀器、蝋燭の灯り……(PHOTO:asumi.h)

バルテュスのリトグラフ“Dessins”(1994年・66/150)が飾られた一角
川島朗オブジェ作品《サチス荘の影(円環)・2012年》(上)
安蘭《恋慕・2008年》(下)と共に……(PHOTO:asumi.h)
巴里のキャバレー「シャ・ノワール」に掲げられた標語「行き交う人々よ、モダンであれ!」をもじり、「扉を過ぐるご婦人たちよ、モデンであることなかれ!」の標語もかかげた我らが文藝キャバレー、これからもウィットたっぷりに、折々に素敵なテーマで開催できればと思っています。
霧とリボンのブローチをお召しのお客様も多く、その美しきコーディネートにもうっとりのひとときでございました。お越し下さいましたご婦人の皆様、お手伝い下さったふみ様、そして華麗に女主人をつとめて下さった高野麻衣さまに心より御礼申し上げます。
ご婦人の皆様、またひそやかにお会いしましょう♪

「言葉を交す、そう、同じ沈黙に属していることを知るために。」
……ナタリー・バーネイ(小早川捷子訳)
Curtain…

改装前のアトリエギャラリー(PHOTO:Fumie Katsuki)
☆高野麻衣さま、画家とモデルの部に参加下さったセラフィム様と美雨さまが当日の様子を綴って下さいました♪
高野麻衣さま
→Salonette: LOG
セラフィム様
→小さな屋根裏部屋
美雨さま
→魔女の星屑散歩 タロット占い師 美雨のブログ
| ホーム |