霧とリボン
愛書家のための小間物ブランド《霧とリボン》のブログ
DATE: 2014/08/14(木)   CATEGORY: ESSAY
舞台《ウォー・ホース〜戦火の馬》
 2014.8.13 東急シアターオーブ

 英国のステージと児童文学の底力にたましいが震えたひととき。繊細精緻な馬の表現、戦場の陰惨と孤独、スローモーションによる戦闘シーン…… 生の舞台でここまで表現できるのか、とただただ圧倒された一夜でした。

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 《ウォー・ホース》は何より、人間の勝手な都合で生を翻弄された数多の馬たちへのレクイエムとして在る。通奏低音として貫かれるイングランド民謡風の歌が折々で肌理を変化させながら響き渡り、劇場全体が祈りの風景と化す。共に祈りを捧げることができたことを幸いに思う。



 そして、写実とは何か、リアリズムとは何かを深く考えさせられる作品でもあった。ハリウッド的なリアリティの追求(これはこれで好き)には追随しない気概。見る側の想像力があってはじめて完成するリアリティ。この表現が生まれ出るために要した途方もない歴史の厚みに頭が下がる思い。(自明のことであろうが)観客を低く見積もらない真剣勝負もまた嬉しい。闇の階調の豊かさ、陰影の美しさにも息をのんだ。

 歌舞伎を彷彿とさせる舞台演出も所々に。人が黒子になって鳥飛ばしたり、だんまり的なスローモーションとか、絵面の見得とか。歌舞伎のリアリズムってやっばり凄いなと思い至る。アヴァンギャルドで超クールである。この希有なるリアリズムが何故現代的な進化を遂げなかったのか、つくづく不思議で残念に思う。

 馬と人間が作り出す美のひとつの頂点たるジンガロの公演《ルンタ》(2005年)も思い出した。吸い込まれそうな沈黙と静謐が、昨夜の舞台にも形を変えて漂っていた。この時も確かガチョウたちが登場していたけれど、馬とガチョウってセットなのかしら…。何につけ、賭をしたがる英国人にも苦笑。動物といえば、勅使川原三郎さんの舞台《ラジ・パケ》(2002年)もありました。

 観劇後は愛する銀座ウエストへ。美味しい紅茶を頂きながら舞台について腹心の友と語らい、帰宅。

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